Fe-C-V合金でピン止め粒子の数とサイズ分布を測定した結果、ピン止め粒子は粒界の面、エッジ、およびコーナーのいずれにおいてもランダム分布の数倍も粒子がピン止めされていることが明らかとなった。その結果、ピン止め粒子のほとんどが粒界にトラップされているとした理論は、粒子の体積分率をfとすると、最終粒径がf^1/2に依存し、実測の結晶粒径に近い値を与える。一方、コーナーのみのピン止めを想定する理論は、最終粒径はf^1/3に依存するが、実測値より小さくなる。西沢らの相関モデルは、トラップされる粒子数とf^2/3に依存する最終粒径の双方とも実測値に近い。粒界面、エッジ、およびコーナーにおけるトラップを総合的に考慮したHunderiとRyumの理論は、粒界に存在する粒子の割合がランダム分布より大きいことを考慮すれば、現実に近い最終粒径を与える。これらの結果はFe-C-B合金と基本的に同じであるが、この合金ではセメンタイトとバナジウム炭化物の2種類のピン止め粒子が存在しており、それぞれの平均粒子径が大きく異なっている。そのため、平均粒子径を用いたZenerの理論を適用する際の注意点を考察した。 粒子径分布の測定は、1枚の断面で行い、立体統計学を用いて真のサイズ分布を計算で推定するのが通例である。この研究では、複数の断面で粒子径を測定し、シミュレーションによって、見かけのサイズ分布と真のサイズ分布の変換行列を求めて、粒界面、エッジ、コーナーにおける粒子数とそのサイズ分布を推定する方法を提案している。
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