研究課題
平均結晶粒径が数10nm以下の超微細多結晶組織の金ナノ結晶(以下n-Au)では、約200K以上での大きな擬弾性(時間遅れを伴う弾性変形)の発現や粒成長・分裂を伴わないクリープ塑性変形などの特徴的な力学特性が見られる。一方、通常の多結晶金に比べ約0.05%小さい作製直後のn-Auの格子定数から室温での空孔型欠陥濃度として10^<-3>程度が見積もられている。これらより、n-Auでは結晶子が結晶粒界層で取り囲まれた疑似二相共存状態となっており、アモルファス合金でのガラス転移のようにn-Auの結晶粒界層が約200Kで粘弾性固体からより空間的余裕を有する粘弾性液体状態となることが予想される。約200K以上で結晶子中及び結晶粒界層の空孔型欠陥濃度は各々減少及び増大すると考えられることから、結晶子中の空孔型欠陥濃度のバロメータとなる格子定数の温度変化を100-300Kにおいて測定した。測定されたn-Auの格子定数の温度変化率は200~300Kで通常の金のものよりも約10%小さく、また200K以下でさらに少し小さくなる傾向が見られた。後者のことは約200Kで結晶粒界層の状態に変化が生じていることを示唆するが、前者の小さな格子定数の温度変化率は低温になるほど格子収縮率は小さい、すなわち結晶子の原子空孔濃度は低下していることを示す。これは、n-Au試料全体での空孔型欠陥が保存されるとした場合に、結晶粒界層での空孔型欠陥濃度が温度の低下とともにさらに増大することを意味し、結晶粒界層がガラス転移するモデルとは合致しない。空孔型欠陥濃度の温度依存性について試料中の空孔型欠陥のサイズや量を直接的な評価可能な低温陽電子消滅測定法の実験を現在進めており、n-Auにおける空孔型欠陥の役割についてさらに検討中である。
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Materials Transactions
巻: 52 ページ: 1-71
Journal of Physics : Conference Series
巻: 200 ページ: 072051(4)
http://www.ims.tsukuba.ac.jp/~mizutani_lab/page/naiyou/naiyou.htm