研究課題
平均結晶粒径が数10nmの金ナノ結晶(以下n-Au)では、単元系にも関わらず結晶子相+結晶粒界相の二相共存状態が準安定化されており、それには室温で0.1%程度と組成成分まで増大した空孔型欠陥が関与している可能性がある。本研究の目的は、空孔型濃度と力学特性や熱物性などと関係を調べ、この二相共存状態モデルの妥当性を検証することである。H23年度は震災の影響で試料作製装置の復旧に時間を要した。そこで、新たな見地から考察する意味で、ある程度の実績がすでにある空孔型欠陥濃度や比熱測定以外について研究を進めた。具体的には、室温引張りクリープ試験中その場STM観察において、結晶粒が表面から独立的に上昇・沈降し、試料表面水平方向にも独立的に移動する様子が見られたが、粒成長や分裂などは見られなかった。このことは、結晶子相+結晶粒界相の二相共存状態となっており、応力下で結晶粒界層が粘弾性的となって塑性変形が進展していることを示唆する。また、非晶質合金では構造・密度揺らぎに起因してパルス通電によりナノ結晶化や試料破断といった特異現象が見出されている。n-Auが結晶子相+結晶粒界相の二相共存を反映して密度揺らぎを有する状態となっているならば非晶質合金と類似の結果が表れると予想されることから、パルス通電によるn-Auの組織変化を調べた。その結果.結晶粒径や配向性にほぼ変化なく電気抵抗値に減少が見られた後に、結晶粒成長や破断の減少が見られた。これは、パルス通電により、空孔型欠陥濃度の減少が生じ二相共存状態の不安定化、さらに続いて結晶粒成長などが生じていることを示唆する。
3: やや遅れている
H23年3月の地震で試料作製装置が被災し、半年後に高品位試料の作製が行えるようになった。計画していた実験を含めて試料物性評価の開始は約半年遅れになった。
被災のために計画から遅れている低温力学特性や空孔型欠陥濃度について評価測定を進める。また、H23年度において結晶粒界の粘弾性的な挙動を示唆する結果が得られた引張り試験中その場STM観察やパルス通電による組織変化の実験も並行して行い、これら動的振る舞いからn-Auの結晶粒界層の状態について知見を得る。n-Cuやn-NiなどのFCC金属についても試料作製を目指し、n-Auと同様な測定実験を行い、二相共存状態モデルの普遍性の検証を試みる.
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