研究課題/領域番号 |
22560658
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
森永 正彦 名古屋大学, 工学研究科, 名誉教授 (50126950)
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研究分担者 |
湯川 宏 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (50293676)
吉野 正人 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (10397466)
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キーワード | 水素脆化 / 化学結合 / 材料設計 / 昇温脱離 |
研究概要 |
合金元素が炭化物および酸化物として析出している場合の水素トラップ作用の電子状態計算による評価と比較するために、実験的な評価の検討を行った。合金元素の炭化物および酸化物そのものに水素をチャージし、昇温脱離法により水素をトラップする結合の強さを調べた。ここで試料への水素のチャージには、0.5MPa水素圧下におけるボールミリング(以下、水素曝露中ミリング)を施した。比較のために、アルゴン雰囲気下でのミリング後の水素曝露(以下、ミリング後水素曝露)、水素曝露のみ、アルゴン雰囲気でのミリングのみ(以下、ミリングのみ)、を施した試料および未処理の試料に対しても昇温脱離試験(以下、TDS)を行った。試料には、遷移金属Nbの炭化物と酸化物のNbC,Nb_2O_5、また典型元素A1の酸化物Al_2O_3を選択した。 NbCでは、水素曝露中ミリングを施した場合にはTDSにおいて200℃付近でH_2のピークが現れ、試料に水素が取り込まれていることが示唆されたが、ミリング後水素曝露の場合にはH_2のピークが現れなかった。また水素曝露のみ、ミリングのみ、未処理の試料の場合においてのピークは確認されなかった。これらより、NbCでは試料へ水素を取り込むには新生表面が現れた時に水素が存在する必要があると考えられる。一方で、Nb_2O_5では、水素曝露中ミリングだけでなくミリング後水素曝露の場合でもTDSにピークが現れた。ここでTDSのピークはH_2Oによるもので、試験後の試料の色および吸収スペクトルの形状からNb_2O_5が還元され、H_2Oが生成していると考えられた。Nb_2O_5では新生表面が生成した後に不活性ガスから置き換わって水素に曝されても取り込むことができていると考えられる。 このような実験法により、化学結合による水素トラップ作用と関係すると考えられる合金元素の炭化物と酸化物の相違が評価できることがわかった。
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