研究課題/領域番号 |
22560663
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
佐々木 泰造 独立行政法人物質・材料研究機構, 理論計算科学ユニット, グループリーダー (60343852)
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キーワード | 金属酸化物 / イオン伝導 / 酸素拡散 / 第一原理計算 / 準格子間機構 / アパタイト |
研究概要 |
この研究では、近年環境エネルギー問題の観点などからも関心の高い固体酸化物について、その内部で起こる原子拡散を第一原理理論により電子論的に追跡し、拡散機構の裏にある電子状態・各種化学結合の役割を明確にする。 さらに酸化物に導入されるドーパントのイオンと拡散する原子との相互作用と拡散への影響を理論計算により導き出す。これによって酸化物全般にわたる拡散の微視的理論の構築を目指し、拡散の制御へと結びつく知見を求めるものである。 陰イオン子の拡散現象として、昨年度、La9.33Si6026(Laアパタイト)に見られる酸素イオン拡散の機構モデルを提案し、準格子間拡散機構が活性化エネルギーに関する実験事実を再現することを示した。そして、拡散の活性化エネルギーはLa空孔によって強く支配されていることを示した。これを受けて、元素置換によりLa空孔が活性化エネルギーへの影響にどのように変化するかについて理論的な検討を開始した。これまでに活性化エネルギーを導出することができ、データの詳細解析・解釈を進めている。また、陽イオンの拡散現象として、金属材料の耐環境性能に大きく影響する酸化物の生成過程に深く関係しているAl203中のAl拡散について、空孔機構モデルと(準)格子間機構モデルによる安定原子配置と欠陥の形成エネルギーの評価を行った。また拡散経路・活性化エネルギーの導出を行い、従来の計算結果とほぼ同様な結果が得られた。実際の状況との比較を行うためにこれらの結果の統計熱力学的処理を進めつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、金属酸化物中の拡散について第一原理理論に立脚した理論モデルの提案を行うこととしており、特に他の欠陥と真性欠陥との相互作用に着目している。真性欠陥の微視的モデルから相互作用モデルの検討へと順調に進ん
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今後の研究の推進方策 |
陰イオンの拡散について、元素置換の効果の統計力学的解析により熱力学的評価を進め、拡散制御法に関する知見獲得を目指す。また、陽イオン拡散と他欠陥との相互作用評価により、酸化物生成機構に関わる実験結果を説明するモデルの検討を行う。
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