研究概要 |
La_<0.56>Sr_<0.44>CoO_3双晶のラウエ法による磁場中X線回折実験を行なった。その結果,強磁性転移温度(~240K)付近の200Kでも磁場による双晶バリアントの再配列(強磁性強弾性結合)が起こることを明らかにした。このことは,強磁性転移温度直下でも本研究で提案する素子が動作することを示唆する。また,磁気容易面内のあらゆる方向に磁場を印加することで双晶を単結晶にすることができることを明らかにした。 La_<0.7>Sr_<0.3>Mn_<1-x>Co_xO_3多結晶試料を合成し,その磁化測定を行なった。その結果,x=0の試料では強磁性と強弾性が結合する挙動は観測されなかったが,x=0.05付近の試料では5Kと300Kで強磁性強弾性結合を示唆する磁化過程を観測した。したがって,この物質は室温動作素子の候補材料となることが明らかになった。 La_<1-x>Ba_xCoO_3(x=0.3)単結晶(双晶)の育成に成功し,この物質がLa_<1-x>Sr_xCoO_3結晶と同様に強磁性強弾性結合を示すことを明らかにした。La_<1-x>Ba_xCoO_3結晶はx=0.4付近で常弾性相と強弾性相の自由エネルギーが等しくなり,超弾性(応力印加による常弾性-強弾性相転移)を示すことが期待される。本研究で提案する素子は強弾性を利用するためその応答にヒステリシスを示すはずであるが,超弾性を利用した素子はヒステリシスを示さないはずである。したがって,La_<1-x>Ba_xCoO_3(x=0.4)単結晶の育成とその物性評価により本研究が更に発展することが期待できる。 La_<1-x>Sr_xCoO_3多結晶薄膜をゾルゲル法により石英ガラス基板上に作製し,その成膜条件を明らかにした。また,石英ガラス上に成膜したLa_<1-x>Sr_xCoO_3多結晶薄膜の磁化測定を行なったところ,単結晶試料に比べて保持力が高く,明瞭な強磁性強弾性結合を示さないことを明らかにした。この結果は本研究における単結晶薄膜試料の必要性を示唆する。
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