研究概要 |
La_<0.7>Sr_<0.3>MnO_3強磁性体焼結体,La_<0.7>Sr_<0.3>CoO_3強磁性体焼結体,La_<0.7>Sr_<0.3>Mn_<0.95>Co_<0.05>O_3強磁性体焼結体それぞれをBaTiO_3強誘電体焼結体(直径10mm,厚さd=0.20mm)と接着剤で貼り合わせた3つの素子を作製し,以下の手順で電気磁気結合係数(α)を測定した。まず,BaTiO_3の分極を整列させるために,この素子に500Vの電圧を印加し,BaTiO_3の強誘電相転移温度以上の温度(140℃)から室温まで冷却した。125Hz,10 Oe(=δH)の交流磁場を強磁性体と強誘電体の界面に平行に印加し,その垂直方向に発生する電圧(δV)をロックインアンプで検出し,電気磁気結合係数α(=δV/[dδH])を得た。その際,磁化を整列させるために,直流磁場(-145 Oe~+145 Oe)を印加して測定した。 得られた電気磁気結合係数は,La_<0.7>Sr_<0.3>MnO_3を用いた素子では,室温で最大3.0mVcm^<-1>Oe^<-1>,77Kで最大4.1mVcm^<-1>Oe^<-1>,La_<0.7>Sr_<0.3>CoO_3を用いた素子では,室温で0(常磁性相のため),77Kで最大1.8mVcm^<-1>Oe^<-1>,La_<0.7>Sr_<0.3>Mn_<0.95>Co_<0.05>O_3を用いた素子では,室温,77Kともに最大9.5mVcm^<-1>Oe^<-1>であった。 信号とノイズの比,S/N比は100以上あり,十分な精度が得られた。 電気磁気結合係数の測定結果は,La_<0.7>Sr_<0.3>MnO_3のMnを少量のCoで置換することで電気磁気効果が増大する可能性を示唆しているが,その結論には再現性の調査が必要である。また,La_<0.7>Sr_<0.3>MnO_3およびLa_<0.7>Sr_<0.3>Mn_<0.95>Co_<0.05>O_3を用いた素子では直流磁場を除去すると電気磁気結合係数は測定精度内で0となったが,La_<0.7>Sr_<0.3>CoO_3を用いた素子では直流磁化を除去後も1.2mVcm^<-1>Oe^<-1>程度の電気磁気結合係数を示した。これはLa_<0.7>Sr_<0.3>MnO_3がソフトな強磁性体で,La_<0.7>Sr_<0.3>CoO_3がハードな強磁性であるとして理解できる。この結果は実際の磁性とよく対応している。
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今後の研究の推進方策 |
NbドープSrTiO_3単結晶基板上にBaTiO_3(またはPb(Ti,Zr)O_3)と強弾性を示す(La,Sr)CoO_3(または強弾性を示さない(La,Sr)MnO_3)をゾルゲル法により成膜し,その電気磁気結合係数を測定する。その比較から,(La,Sr)CoO_3が強弾性を持つことによる電気磁気結合係数への効果を明らかにするとともに,巨大電気磁気結合を発現する素子の設計指針を得る。
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