本研究では、超高出力(単一モード10kW級)ファイバレーザー、および、超高効率ファイバアンプを目指して、希土類の発光効率およびフォトダークニングと仮想温度との相関を明らかにすることを目的としている。仮想温度は、ガラスの構造無秩序性の1つの指標であり、もともとは禁制遷移である4f-4f準位間の遷移確率、および、フォトダークニングの起こりやすさと密接に関係していると予想される。また、フォトダークニング抑制するためのガラス組成の検討も併せて目標とした。本年度の成果を以下に記す。 ① フォトダークニングと仮想温度の関係を詳細に調べ、フォトダークニングを抑制するための最適ファイバ紡糸条件を検討した。 ②フォトダークニング抑制効果の高いファイバのガラス組成を見出した。さらに、この組成を実現するために、MCVD法のプロセスを改良し、現在市販されているYb添加ファイバに比べて、1/5以下に劣化を抑制できるファイバの開発に成功した。 ③ Yb添加以外の希土類添加シリカガラスにおいて、フォトダークニングの起こりやすさを調べ、電荷移動遷移の吸収波長の違いにより、フォトダークニングの起こりやすさが変わることを見出した。また、可視ファイバレーザーで高出力化が可能な希土類添加シリカガラスの候補を選定した。これらの候補の内、2種類の希土類添加シリカガラスにおいて、初めて可視増幅特性を確認した。 ④フォトダークニングとフォトブリーチングが起こる波長について詳細に調べた。この結果、フォトブリーチングの機構を解明することができた。
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