前年度に引き続き、粒界ナノストイキオメトリー制御型複合酸化物のモデル材料として、MgSi2O4およびMgAl2O4スピネル不定比化合物を作製した。構成金属イオンの比率を0mol%~4mol%で変化させ、温度1100℃~1800℃で焼結を行い、点欠陥反応・イオン価数制御を目的として、高温大気炉および真空炉を適宜使用した。サンプルの焼結緻密化挙動および粒成長挙動から、酸化物多結晶体の微構造発達過程に及ぼすストイキオメトリーの効果を検証した。また、これまでの研究によって明らかとなった、Y2O3母相系多結晶体におけるストイキオメトリーの焼結緻密化への効果についても調べ、電場/応力場印加時における焼結性・粒成長をはじめとする微構造形成過程への影響を調査した。その結果、粒界ナノ領域において、電場/応力場印加ならびに異種カチオン偏析に伴い、単結晶および通常の多結晶とは異なる電子状態が形成されており、それが焼結緻密化速度の向上と関係があることが判明した。またストイキオメトリー制御によってスピネルの蛍光特性に変化が認められた。特にTiドープMgAl2O4では、レアメタルを含まないにもかかわらず白色に近い蛍光を得ることが出来た。これらは粒界固有の点欠陥と共に、外場印加またはカチオン添加による点欠陥・原子間相互作用の生成・制御が酸化物の高温物質輸送現象ならびに各種物理特性に大きな影響を及ぼすことを意味しており、酸化物の組織制御および機能発現の上で重要な知見である。これらの結果は国内外の学会で(招待講演4件含む)発表したほか、欧文学術論文誌に掲載された。これらの成果から、粒界ナノストイキオメトリー制御に基づく複合酸化物の組織制御と機能発現に関して、新たな材料開発手法を提案する知見を得ることが出来た。
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