研究概要 |
我々は、今までの研究に基づいて、(Na_<0.5>K_<0.5>)NbO_3母材にATiO_3(A=Bi_<0.5>K_<0.5>,Bi_<0.5>Na_<0.5>,Bi_<0.5>Li_<0.5>)及びBZrO_3(B=Ba,SrCa)を同時に導入した(1-x-y)(Na_<0.5>K_<0.5>)NbO_<3-x>AriO_<3-y>BZrO_3(NKN-AT-BZ)固溶体を作成し、正方晶/菱面晶相境界(MPB)の形成により、ニオブ系鉛フリー圧電セラミックスの圧電特性を大幅に向上させたことに成功した。 実用化のために、微量希土類元素或いは遷移金属元素の添加により局所構造及び強誘電ドメインを制御することによって材料の圧電特性を調整することが必要不可欠である。しかし、NKN-AT-BZ固溶体の特性における微量元素添加の効果はまだ不明である。そこで、実用化水準のニオブ系鉛フリー圧電セラミックスを設計・創製するため、NKN-AT-BZ固溶体の組成に対して、系統的な実験を通して、各々添加元素の効果を明らかにする必要がある。平成22年度は、主にY及びMnをA=Bi_<0.5>K_<0.5>,B=Ba,x+y=0.08のNKN-BiKT-BZ固溶体へ添加し、これら添加元素のNKN-BiKT-BZ固溶体特性への影響を調べた。 NKN-BiKT-BZ粉末を固相反応法で合成する。YあるいはMnの添加量は0.25mol%である。無添加のNKN-BiKT-BZ試料より、Mnを添加した試料のk_p,d_<33>が向上している。また、MPB付近組成(y=0.05-0.06)におけるMn添加により物性の向上がより顕著である。走査型電子顕微鏡でMn添加により試料の粒子サイズが大きくなったことが分かった。これはMn添加した試料のk_p,d_<33>が向上した主な原因だと考えている。また、Mn添加によりQ_mの増大(試料のハード化)も確認できた。この増大のメカニズムは鉛系のハード化と類似すると考えている。一方Yを添加した試料はk_p,d_<33>が減少し、Q_mは大きな変化がなかった。これの原因はまだはっきり分かっていないが、添加量が最適ではないことが考えられる原因の一つである。以上の結果より、MnはNKN-BiKT-BZ系試料の圧電特性調整に有効であることが確認できた。
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