誘電体セラミックスにおいて様々な欠陥等の構造変化と結びついて機能を発現する原因と考えられる"粒界"の構造を高分解で非破壊、非接触の特徴を持つAFMラマン分光法を用いて解析し、PTCサーミスタをはじめとする電子セラミックスデバイスの動作原理を明らかにすると共に構造解析を通して電子セラミックスデバイスの特性を制御し、高性能化・高信頼性化に対しての指針を得ることを研究目的に研究を行った。以上の研究目的を達成するために、平成22年度はAFMラマン分光法を用いた高分解能構造評価技術の確立とBaTiO_3セラミックス中の酸素欠陥評価の2つの項目について実験を行った。AgのナノパーティクルをAFMのカンチレバー先端につけ、試料との表面増強効果を用いて微少領域から強いラマン信号を得られる様に改良を加えたAFMラマン装置を用いて15nmの膜厚の歪みSi及びSi基板のラマンスペクトルの分離に成功した。また、水素還元処理を行い、酸素欠陥を導入したBaTiO_3セラミックス顕微ラマン分光装置を用いて、酸素欠陥の同定及び分布に関する実験を行った。その結果、以前に研究を行った酸素欠陥を導入したBaTiO_3単結晶と同様にBaTiO_3の酸素イオンに関するフォノン振動の他に、酸素欠陥に起因するラマンピークを観測し、酸素欠陥同定に成功した。現在これらの2つの成果を統合し、AFMラマンによる高空間分解能でBaTiO_3セラミックス中の酸素欠陥同定に関する研究を行っている。
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