H22年度には、ペロプスカイト型酸化物の結晶構造および特性に注目した。ペロブスカイト型酸化物の酸素イオン伝導に関する機構・エネルギーの原子レベル計算機シミュレーションを行った。組成・構造など多数の条件で計算するため、シミュレーション手法として、古典力学に基づいた経験的なポテンシャル関数と静力学法を用いた。このように多くのペロブスカイト型酸化物の種類(組成と対称性)を系統的に検討したのは、本研究が世界で初めてである。また、ペロブスカイト型酸化物/岩塩型酸化物系薄膜における異相界面の原子構造および特性を検討した。このテーマでは量子理論に基づいた第一原理計算および静力学法を採用した。その結果、(1)物質のスクリーニングツールとして、理論計算の有用さ・実現可能性を実際に証明した。(2)化学組成と酸素イオン伝導性の依存性が従来に報告された実験結果とよく一致した。また、今まで実験で検討されてない物質が高い酸素イオン伝導性を持つことを解明した。(3)ペロブスカイト型BaZrO_3と岩塩形MgOの表面構造・安定性を系統的に検討して、もっとも安定な表面方位を解明した。BaZrO_3もMgOも、(001)の表面が最低な形成エネルギーであることが確認できた。(4)超伝導体テープに使用されるBaZrO_3中間層とMgO基板の間における異相界面の構造を解明した。計算結果により整合性の高い(001)/[001]BaZrO_3-(001)/[001]MgOの界面に格子ミスフィットが小さいことが明らかにした。したがって、強度の高く非常に安定な界面であると推定できた。(5)単結晶の別々の電子状態密度と比べて、BaZrO_3とMgO薄膜中にある異相界面の電子密度があまり変わらないが、バンドギャップが若干と狭くなる。以上、5つの成果を獲得した。
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