超伝導体、ミクロ電池、固体燃料電池、ガスセンサなどの電子デバイスが多層の酸化物セラミックスで構成される。それら多層電子デバイスの性能は、薄膜と基板の間の異相界面の影響を大きく受け、特に界面結合と結晶方位は重要なパラメータである。本研究では原子・電子レベルでの理論計算を用いて、幾つかの材料系に関した酸化物間の異相界面の構造及び特性を系統的に検討した。目的としては界面理論を構築して、未知の現象に対する電子・原子レベルの理解を深める。それに基づき新たなエネルギーデバイスの材料設計方針が得られ、材料開発過程が更なる高効率化に向けられる。 まず、薄膜超伝導体の代表的基板材料MgOとBaZrO3の酸化物間の異相界面及びBaZrO3中間層とYBa2Cu3O7超伝導体の間の異相界面の安定性を解析した。手法としては量子理論に基づいた第一原理計算法を主に用いた。特にナノレベルでの薄膜内の結合変化や結晶の整合性に注目し、最も安定な異相界面構造を解明した。また、それぞれの界面から生成された結晶方位の表面構造や界面付近のひずみなどを界面の安定性に与える要因を検討した。 また、高性能光触媒の開発を支援するため、LaAlO3基盤上のアナターゼTiO2薄膜間の異相界面を解析して、特性のよい薄膜の結晶方位関係を研究した。理論計算結果を電子顕微鏡による実験結果と比較したら、よく一致することが確認できた。異相界面形状とTiO2薄膜内のドメイン境界の依存性を世界初で明らかにした。 さらに、現在注目されている高性能誘電体BiFeO3薄膜の原子構造と分極特性について計算および解析を行った。また、次世代二次電池用材料の開発を寄与するために、正極材料の薄膜中の界面を計算した。デバイスの性能を改善するためには、界面の重要な役割が分かり、最適な薄膜界面の設計指針を定めるツールとして、理論計算の不可欠さを示したと考えている。
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