研究概要 |
セリア系電解質の粒界抵抗が雰囲気及び個々の粒界性格によってどのように変化するかを明らかにすることを目的に,粒界抵抗を個々の粒界に対して直接的に測定することを検討している。そのなかで,平成22年度については,次のような成果が得られた。 (1) 直接測定に適したカチオン固溶セリア試料の作製:SOFCの低温作動用電解質として期待されているガドリニウム固溶酸化セリウム(GDC)について,十分緻密で微細構造を再現性よく構築できるプロセスを検討した。その結果,空気中,1600℃で50時間焼成することによって,直接測定に適した粒径10~13μmの緻密焼結体が得られた。また,研磨およびエッチング条件を最適化した結果,空気中,1400℃,1時間の熱処理によって,粒内の表面粗さ5~8nmに対して,粒界における深さが約30nmといった,評価に適したGDC焼結体試料を構築することができた。 (2) 大気雰囲気で熱処理したGDCの粒界物性の直接測定:4Probe-SPMをGDC測定用に調整し,かつ,本評価に適した探針形状を設計及び構築することによって,粒内及び粒界抵抗の直接測定を行った。その結果,粒内測定については,ポアソン方程式の適用が可能であること,オーミック特性が得られること,抵抗の温度依存性がアレニウス式に従い,その活性化エネルギーは文献値と近い値を示した。そこで,さらに粒界特性について検討した。その結果,粒界を隔てて測定することによって,明瞭な非オーミック特性をしめした。さらに,粒界からの距離と電位分布との関係を測定したところ,粒界近傍で電位の不連続領域が検出された。これは,ダブルショットキーバリアの存在を示唆しており,粒内とはことなる粒界由来の電気的物性を直接測定することができた。 今後,可能となった粒界物性と,粒界性格との関係を詳細に明らかにしていく。
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