研究概要 |
セリア系電解質の粒界抵抗が雰囲気及び個々の粒界性格によってどのように変化するかを明らかにすることを目的に,粒界抵抗を個々の粒界に対して直接的に測定することを検討している。そのなかで,平成23年度については,次のような成果が得られた。 (1)還元雰囲気中で熱処理したセリア系電解質を用いた粒界抵抗の直接測定 あらかじめ,Ar雰囲気で熱処理することによってCe^<4+>の一部をCe^<3+>に還元した試料について,4Probe SPMを用いて,粒界の電気的特性を検討した。その結果,空気中で熱処理した際と粒界近傍で電位の不連続領域,すなわちダブルショットキーバリア状態が異なることがわかった。これは,酸化物イオン伝導と電子伝導では,粒界物性の幅が異なることを示唆している。また,4Probe SPMの測定は超高真空下であるため,長時間の測定によって表面の還元が起こり,粒界物性に若干の変化がみられることがわかった。特に400℃程度まで昇温したときには,還元による影響は明確にみられた。現段階では,温度条件と還元の程度に関する定量的な相関性は得られていないが,400℃程度まで昇温することによって,H_2等のガス吹きつけの影響を調べることは有効であることが示唆された。 (2)セリア系電解質の粒界物性に及ぼす不純物の影響 セリア系電解質に含まれるGd固溶量との関係を検討した。まず,Gdの固溶量を変化させた緻密焼結体の合成条件を詳細に検討した結果,Gd固溶量にかかわらず,ほぼ同程度の粒径をもつ緻密焼結体を得ることができた。これらの緻密焼結体の粒界物性を4Probe SPMを用いて検討したが,現段階では,Gd固溶量との相関は見られていない。今後,還元による影響を含めて定量的な評価を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度に予定していた,「FE-SEM/EBSP/OIMによる多結晶体中の粒界キャラクタリゼーション」の実施については,平成23年度に本装置の使用時間を十分に確保できなかったために,若干の遅れがみられる。平成24年度については,使用時間を十分確保できる見込みであり,加速的に推進できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度末の研究分担者である木下久美子氏の退職により,平成24年度については一時的に研究の進捗が滞る見込みであるが,新たな研究分担者の追加等により,本課題を加速的に推進することを計画している。 また,平成24年度については,特に研究成果の発表についても重点的に取り組む予定である。
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