炭素繊維強化樹脂複合材料(CFRP)は、その比強度・比剛性を活かして航空機の一次構造部材として利用されている。この様な利用環境下では、CFRPが種々の物質と高速で衝突することは避けがたい。衝突する材質がCFRPの損傷挙動に与える影響、CFRPの構成要素がその損傷に与える影響について、理解する必要がある。そこで、飛翔体材質あるいは構成要素を制御した飛翔体衝突実験を実施して、試料の損傷挙動を高速度ビデオで詳細観察するとともに、ステレオビジョン法を用いて3次元化することで、定性解析のみならず定量解析を行った。その結果飛翔体が貫通するエネルギは、飛翔体の変形や破壊と大きく関係していることが分かった。つまり、変形や破壊をおこさない飛翔体では、貫通するエネルギは飛翔体材質によらず、その大きさに依存する。これに対して、変形や破壊する材質の飛翔体では、より大きなエネルギを与えないと試料を貫通しないことが分かった。また、飛翔体の運動エネルギ散逸に試料の変形が大きく関係しており、変形能の大きな繊維では飛翔体運動エネルギの半分以上がCFRPの変形に費やされていることが分かった。また、変形能の大きな繊維ほど、マトリックスの特性を反映すること、繊維の撓みを阻害しないマトリックスほど、耐衝撃特性が大きいことが明らかとなった。 炭素繊維が硬いことが災いして、高速で精密な加工が難しいことが明らかとなっている。耐衝撃特性と加工性との両立を目指すにあたり、穿孔時のスラスト力を加工性の指標として、自作マトリックス樹脂の加工性について検討した。スラスト力は、加工条件やドリル形状にも大きく依存し、樹脂の種類との直接的な対応を見つけることはできなかった。しかし、大きな傾向として、散逸エネルギの大きなマトリックス樹脂は、小さなスラスト力で穿孔可能であり、耐衝撃特性と加工性が一つのCFRPで両立できることが示された。
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