本研究では、新たに開発された炭素繊維の破壊靭性試験方法を用いて、各種炭素繊維の破壊靭性を精密に測定するとともに、微細組織と破壊靭性値の関連を明らかにすることで、より高靱性な炭素繊維を得るための指針を得ることを目的とする。これを実現するため、平成22年度は以下の項目について検討を行った。 (1) 異方性弾性率の測定 破壊靭性値を正確に決定するには、炭素繊維の持つ異方性弾性率の値を用いて計算する必要がある。しかしながら、異方性弾性率の測定方法は確立されたものがなく、試験法自体の開発が必要である。そこで、本年度はねじり振動法による炭素繊維のせん断弾性率の測定方法について検討した。炭素繊維にプラスチックフィルムから打ち抜いた円盤を接着し、防風用の容器内でねじり振動を与える、極めて簡便な装置を開発し、せん断弾性率の測定を実施した。その結果、高精度に異方性弾性率の一つを決定することが可能になった。 (2) 破面および微細組織の観察 各種炭素繊維の微細組織および破壊靭性試験後の破面を、高分解能の走査型電子顕微鏡ならびに透過型電子顕微鏡で観察した。しかしながら、透過電子顕微鏡観察に関しては鮮明な画像を得ることができず、来年度も検討を進める。
|