研究概要 |
高性能モーター用希土類永久磁石では,DyやTbなどの重希土類元素(HRE)を大量に消費するため,資源枯渇問題へと繋がる恐れが高い.よって,HREを極力使用せずに高い耐熱性を持つ高保磁力希土類焼結磁石の開発が急務である.本申請課題では高保磁力化の指導指針を獲得するために,HRE粒界拡散型Nd-Fe-B焼結磁石の粒界・界面と粒子サイズに着目し,薄膜プロセスを用いて単磁区サイズ以下の主相粒子とHREを含む粒界相との理想界面を持ったナノマグネットモデル膜を創成して保磁力メカニズムの解明を目指す.このために以下の2つのシリーズのモデル試料を作製し,その界面状態と保磁力の関係を系統的に調べた. まず,シリーズIの試料では,薄膜成長に特有な3D島状成長を利用することで主相であるNd_2Fe_<14>B粒子のサイズを変化させた.すなわち,超高真空(UHV)スパッタ装置を用い,単結晶基板上へ成長させるNd-Fe-B層厚を減少することにより,孤立状態の高品位Nd_2Fe_<14>B粒子のサイズが減少出来ることを確認した。この主相粒子サイズの低減によって保磁力が最大で16kOeまで増加する微細化効果と,この孤立粒子へNd酸化物が接している場合に保磁力が最大で26.2kOeまで増大する界面効果を見出した.さらに両効果は独立であり,且つ相補的な関係であることを明らかにした.また,HRE元素であるDy被覆したNd-Fe-B膜を作製し,これに様々な温度でポストアニールすることでDy/Nd_2Fe_<14>B界面状態を変化させた.その結果,室温でDy被覆した試料では保磁力の値は,被覆前と変わらなかったが,この試料に対して繰り返し真空中アニール(SSA)することで保磁力が増大し,特に620℃でのアニールで12kOe以上の保磁力増大現象を確認した.
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