研究課題/領域番号 |
22560689
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
伊藤 吾朗 茨城大学, 工学部, 教授 (80158758)
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研究分担者 |
伊藤 伸英 茨城大学, 工学部, 准教授 (70203156)
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キーワード | 水素 / アルミニウム合金 / ステンレス鋼 / き裂 / 金属間化合物相 / 侵入挙動 / 金属組織 / トリチウムオートラジオグラフィ |
研究概要 |
水素の挙動調査における有効な方法の一つとして、金属材料中へ侵入した水素の存在位置を金属組織と対応づけて知ることができるトリチウムオートラジオグラフィ(TARG)がある。平成22年度は、脆化を示す高強度の7075アルミニウム合金について、無負荷でき裂がない場合に、水素が粗大な金属間化合物相(おもにAl_7Cu_2Fe相)から侵入することをTARGにより明らかにした。これを受けて平成23年度は同じくTARGを用いて、動的環境下(き裂先端)での水素挙動を明らかにすること、モデルとなるアルミニウム合金を作製しAl_7Cu_2Fe以外に存在するMgZn_2化合物の影響を調査すること、新たにステンレス鋼(SUS304)中の水素の挙動を明らかにすることを試みた。SUS304では、トリチウムの侵入深度が浅く、チャージ後の鏡面仕上げの際にその全てが取り去られ、分布を得ることはできなかった。一方アルミニウム合金で、動的環境下での水素侵入挙動を金属組織の関係で調査した。動的環境下での水素侵入挙動については、予き裂を導入したA7075-T6材およびA6061-T6材に応力負荷環境でTARGを行い、き裂先端への水素の侵入・集積を調査した。結果的にはトリチウムの侵入を確認することができなかったが、これはき裂近傍への乳剤の塗布が困難であることが原因と考えられた。また7000系合金の主要な金属間化合物であるMgZn_2相の水素の侵入挙動への影響を調査した結果、粒子サイズが大きい(1四m以上)MgZn2相は水素の侵入サイトとなるが、侵入への助長効果はAl_7Cu_2Fe相に比べて小さいと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
応力負荷がない場合のアルミニウム合金への侵入挙動については、計画通り進行したが、応力負荷状態での侵入挙動を明らかにすることができなかったこと、および鉄鋼等他の金属材料の挙動を明らかにすることができなかったことなどから、計画に比べてやや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
上記の進捗状況を考慮し、材料種を拡げるのではなく、アルミニウムと鉄銅について詳しく検討を進めるとこにする。両材料について、水素脆化を示す材料とそうでない材料を試験材として、応力負荷状態での侵入挙動を確実に明らかにする。とくに鉄銅材料ではフェライト系かオーステナイト系かで挙動が大きく異なることが予想され、現在、両系およびフェライトとオーステナイトが混在する2相系のステンレス銅をそろえて、調査を始めつつある。
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