研究概要 |
Mg-Ca系亜共晶合金は,初晶α-Mg相と共晶α-Mg/C14-Mg2Ca微細ラメラの混合組織を有する。マグネシウム合金の高温強度向上に果たす微細ラメラ相の有用性を評価するために,三種類のMg-Ca系亜共晶合金について,そのクリープ特性を温度473K,応力50MPa以下の低応力において調査した。本年度は,クリープ強度に及ぼす微細ラメラ体積率の影響および本系合金における転位下部組織を明らかにするとともに,クリープ変形機構についても調査を行った。得られた成果を,以下に総括する。(1)応力負荷直後の遷移クリープ域初期において,クリープ速度はCa量によらずほぼ一定となり,その応力指数は1となる。これに対し,最小クリープ速度は,Ca量の増加に伴い単調に減少する。そして,最小クリープ速度の応力指数は4となる。これらの結果は,本系合金のクリープ変形機構が転位の上昇運動であることを示唆している。(2)初晶α-Mg粒内および共晶α-Mg/C14-Mg2Caラメラ組織内部ともに,鋳造時に多量の転位が導入される。初晶α-Mg粒内における転位の性状を解析したところ,大部分の転位は六方最密構造の底面上に位置しており,また,ラメラ組織中の転位は,α-Mg相およびC14-Mg_2Ca相の2つの相を貫通するように存在している。本系合金のクリープでは,鋳造時に導入された初期転位の容易すべりによりクリープ変形が生じ,このため遷移クリープ初期におけるクリープ速度の応力指数は1になるものと考えられる。(3)Mg合金におけるクリープ破断寿命は,ラーソンミラーパラメーターにより整理され,ラーソンミラーパラメーター定数は15から20の範囲となることが明らかとなった。この知見は,耐熱マグネシウム合金におけるクリープ破断寿命予測にあたり有用と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果から,ラメラ組織を構成するα-Mg相およびC14-Mg_2Ca相の二相の中で,C14-Mg_2Ca相が高温強度向上に有用であることが明らかとなった。この結果を受けて,C14-Mg_2Ca相の体積率をさらに高めたMg-Ca二元系過共晶合金の高温強度調査が,新たな研究課題として必要であるとの認識を得た。次年度では,Mg-Ca二元系過共晶合金について,組織とクリープ強度との関係を明らかにすることとする。
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