研究概要 |
代表的な水素吸蔵合金であるLaNi_5においてサイクル特性を改善する効果があるSn,とCuについて、第一原理計算により占有サイトの評価を行った。その結果、SnはNi 3gサイトを優先的に占有するのに対して、CuはNi 2cとNi 3gの両方のサイトを占有するという結果が得られた。これは実験による報告と一致する結果である。次に、SnとCuがLaNi_5の空孔形成エネルギーに与える影響を評価した。その結果、SnおよびNi 3gサイトを占有したCuはどちらも0.1eV程度空孔形成エネルギーを低下させる結果となった。添加元素とH原子との相互作用を明らかにするために、LaNi_5水素化物中でのSn周辺の局所構造を調べたところ、SnとH原子との間には斥力が働くことにより、Ni-H間の距離が約1.6Aに対してSn-H間の距離は約2.7Aとなっており、Sn周辺の格子間位置にはH原子が存在しないことが分かった。陽電子寿命測定ではSnやCuの添加により空孔形成が抑制されるという結果が得られており、SnやCuが空孔形成エネルギーを低下させるという今回の結果とは逆の傾向になっている。しかし、LaNi_5水素化物中ではSnとH原子との間に斥力が働くことから判断すると、空孔を安定化させる効果があるH原子の空孔へのトラップをSnが抑制することにより、空孔形成が抑制されていると考えられる。次年度はSnやCuがH原子の空孔へのトラップにどのような影響を及ぼしているのかを評価することにより、SnやCuの空孔形成抑制のメカニズムを明らかにしていく。また、MnやAlなどの固溶元素の空孔形成エネルギーに与える影響の評価、および積層構造を有するLa_2Ni_7における空孔形成能の検討にも取り組む予定である。
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