研究課題/領域番号 |
22560700
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
田中 康弘 香川大学, 工学部, 准教授 (10217086)
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研究分担者 |
馮 旗 香川大学, 工学部, 教授 (80274356)
石川 善恵 香川大学, 工学部, 准教授 (20509129)
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キーワード | 構造・機能材料 / 生体材料 / 電子顕微鏡 / 表面・界面物性 / 陽極酸化 |
研究概要 |
本研究では、陽極酸化と水熱処理を組合せ、強固かつ硬組織適合性の機能を持つチタン表面酸化物皮膜の生成法を開発する。集束イオンビーム加工観察装置(FIB)と透過型電子顕微鏡(TEM)観察を併用してTi-6Al-7Nb合金と生成皮膜間結合状態の原子レベル解析を行い、カルシウムイオンが表面酸化皮膜に有効に取り込まれる陽極酸化+水熱処理を確立する。水熱処理したTi-6Al-7Nb合金基板をハンクス緩衝塩溶液中に浸漬してアパタイト析出性能を評価する。 フッ化物イオン含有化成液中、電圧20Vで陽極酸化すると約70nm孔径ナノチューブ構造が生成された。ナノチューブは下地がα相の箇所で生成するが、下地がβ相の箇所では生成しない。ニオブ含有アモルファス酸化チタン生成皮膜は、フッ化物イオンに対する溶解性が低いことが原因と思われる。グリセロリン酸カルシウム液中で150~180℃の範囲で水熱処理することで、ナノチューブ表面にリン酸カルシウムゲルを析出させた。一方カルシウムイオン濃度150mM以上のグリセロリン酸カルシウムや酢酸カルシウムを化成液として電圧500Vでマイクロアーク酸化(MAO)を行うと下地に関係なく数ミクロンの孔径の多孔質酸化皮膜が形成され、皮膜中にカルシウムを取り込むことができた。STEM-EDXマッピングの結果、酸化皮膜中のカルシウムはチタンと相分離傾向にあり、酸化カルシウムは非晶質相として存在することがわかった。一方酸化チタンは化成液中のアニオンの影響を受け、酢酸カルシウムではルチル構造酸化チタン、グリセロリン酸カルシウムではリン酸イオンの影響を受け、非晶質相として存在すること、酢酸カルシウムではMAO皮膜と下地金属間にバリヤ層的な構造が存在することがわかった。バリヤ層の存在下、基板と酸化物界面のポア欠陥が減少した。バリヤ層の有無は界面強度を支配する一因子と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
チタン合金表面の酸化皮膜にカルシウムイオンを取り込む方法を確立した。カルシウムイオンが存在すると、チタン表面でのハイドロキシアパタイト析出性能が向上することが知られており、最終年度ではハンクス液に浸漬してアパタイト析出性能評価を行い、硬組織適合性向上の検討を行う。
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今後の研究の推進方策 |
ナノチューブ構造+水熱処理、及びカルシウムイオン含有化成液中でのMAO処理によってカルシウムイオン含有表面改質皮膜を生体用Ti-6Al-7Nb合金上に生成することに成功したので、本年度はハンクス液中でのアパタイト析出性能評価を実施する。生成アパタイトは生体埋入された場合、破骨細胞によるカルシウム吸収源として作用し、骨リモデリング過程で骨芽細胞へのカルシウム供給源と働くことを期待している。一方で酸化チタン皮膜はチタンインプラント側に強固に結合していなければならない。そこで生成析出アパタイトの微細構造、断面構造をSEMやFIBを用いて評価し、ナノレベルの元素分布をSTEM-EDXで明らかにする。
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