研究概要 |
平成22年度は設定した研究計画に沿って,1)研究対象材料の決定,2)試験片サイズの決定,3)ナノスケールマーキング手法の検討,の3点について,研究を実施した.1)については,自動車用薄板鋼板として実用化されているフェライト-マルテンサイト二相鋼,および,凍土パイプライン用材料として有望なフェライト-ベイナイト二相鋼,さらに自動車軽量化に貢献が期待できるマグネシウム合金を対象材料とすることに決定した.これはいずれも,各材料が加工硬化に富むという力学特性を有することによる.また,2)については,計画通り全長30mmを切るサイズの試験片を放電加工により作製することに成功した.本研究計画の最重点課題である3)については,上に挙げた試験用材料が二相組織であることより表面の平滑性の維持が困難であると予想されたが,電子線リソグラフィプロセスの工夫により,格子状であれば間隔500nmの微細マーカーを付与することに成功した.これらの成果により,走査電子顕微鏡内部で十分に観察できる小型試験片に対して微細マーカーを付与することが可能であることが明らかとなった.この微細マーカー法により,前述した3種類の対象材料について,引張変形中に各構成相内部においてどのように局所的な塑性変形が進んでいるのか,その様相を把握し,局所ひずみを定量評価できることとなる.これは,これまで解明が困難であった二相材料の塑性変形の不均一の発達,および,その力学特性,特に加工硬化特性への影響を明らかにするための有効なツールが新たに得られたことを意味する.平成23年度以降は,この評価手法を用いて対象材料の変形特性を調べ,その発現メカニズムを検討していく.これにより,強度や延性に優れた新たな構造用材料の創出に寄与できるものと考えられる.
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