熱電変換材料Zn_4Sb_3においては、ZnとSbが結晶格子を組み、Znがガラス状に侵入サイトに配置する。このため、Zn_4Sb_3は、金属結晶の様な高電導性とガラスの様な低熱伝導性を合わせ持ち、熱電材料として更に熱電性能が高められることが期待される。本研究の目的は、Zn-Sb合金の塊状固体(バルク)、薄膜状リボン、粉末焼結体を作製し、Zn_4Sb_3構造が出現する組成範囲、及びZnの存在形態と分布について実験的に明らかにし、金属学的考察を加えることによって、熱電性能の改善をはかることである。 本年度は、Zn_xSb_3(x=3.4~4.3)合金のバルク及びリボンを液体急冷法によって作製し、種々の熱処理を行った。その後、X線回折実験、電子顕微鏡観察、ゼーベック係数の測定、電導度の測定、熱伝導度の測定、性能指数の測定、出力因子の算出などを行った。 得られた知見は次の通りである。(a)ゼーベック係数、電導度、熱伝導度、性能指数、出力因子は組成x及び熱処理によって、またバルクかリボンかによって異なる。(b)バルクの性能指数は熱処理の有無に関わらず、x<4の範囲においてxの増加とともに大きくなり、x>4の範囲においてほぼ一定になる。リボンの性能指数は熱処理を施さない場合小さく、熱処理を施した場合xとともに増加する。(c)Zn_4Sb_3は、xによって異なる他相と共存する。また、Zn_4Sb_3は化学量論組成の範囲外に固溶領域をもち、xによって異なる量のショットキー型、フレンケル型の侵入型Znを含んでいる。
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