研究課題/領域番号 |
22560704
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
奥 健夫 滋賀県立大学, 工学部, 教授 (30221849)
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キーワード | 太陽電池 / バルクヘテロ接合 / 量子ドット / 自己組織 / コアシェル構造 / フラーレン / フタロシアニン / ポルフィリン |
研究概要 |
本研究の目的は、従来のシリコン系太陽電池に代わる、安価で環境にも配慮した、バンドギャップを自由にデザイン可能な14族(C-Si-Ge)系超高効率バルクヘテロ接合自己組織コアシェル量子ドット太陽電池の研究開発を行ない、その原子配列や光起電力機構を量子物理学的手法を用いて解明することである。本年度は以下の6つの新規太陽電池を開発し、その原子レベルのナノ構造・電子状態・光起電力特性に関する知見を得ることができた。 (1)Gaフタロシアニン二量体-C_<60>系太陽電池 (2)PVK/C_<60>/ホールブロック層系バルクヘテロ接合太陽電池 (3)Cuフタロシアニン/Geナノ粒子/C_<60>系有機薄膜太陽電池 (4)銅酸化物/C_<60>系有機無機ハイブリッド太陽電池 (5)Coフタロシアニン/C_<60>-Auナノ粒子系太陽電池 (6)ポリシラン(Si)-C_<60>系太陽電池 PVK:C_<60>セルとそのセルにPTCDAを導入した場合、電流密度の増加、FFが向上し、効率が上昇した。 これはPTCDAがホールをブロックすることで電荷の再結合の抑制ができたためであると考えられる。また、PVK/C_<60>に加えてPVK/PTCDAのドナー/アクセプター界面ができたため、その両方で電荷分離が起きたために効率が上昇したと考えられる。CuPc:C_<60>層有機半導体層中に、Ge系有機溶液をベースにしたナノ粒子を導入することでエネルギーレベルを制御し光吸収率を増加させ、光電変換効率を向上させることができた。電子顕微鏡像にGeドットが分散している様子が観察された。バルクヘテロ接合及び量子ドット界面にて電荷分離が生じ、PEDOT-PSS、ITOにホールが移動し、同時に生成した電子はC_<60>、Al電極に移動し、光起電力を発生する。有機系Ge材料を量子ドットとして機能させ、光吸収率が増加し短絡電流密度・光電変換効率増加という結果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付いただいた予算により研究を順調に進めさせていただくことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後さらに本研究の成果を基にして、変換効率上昇のため再結合損失を解消する方法を検討していき、フタロシアニン・ポルフィリン/Geナノ粒子/C_<60>系バルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池を作製し、有機薄膜中のドナーとアクセプターのナノ構造を制御する方法を検討し、電荷分離と電荷輸送を改善させる予定である。また、ポリシラン(Si)-C_<60>系太陽電池、Cu系C_<60>有機無機ハイブリッド太陽電池においても、さらなるナノ構造制御・光起電力機構解明と光電変換効率上昇を目指す。特に14族系であるC-Si-Geをベースとしたコアシェル量子ドットの配列によりバンドギャップ制御を試みる。さらに分子動力学法・熱力学計算による合成プロセス予測も加味しつつ、高効率太陽電池の新規合成プロセスを検討する。また有機化学修飾によるコアシェル型構造の分子設計や、ナノ粒子導入による光収集構造形成による電荷分離の高効率化、薄膜配向制御、電子・ホール移動度の向上を目指す。
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