研究概要 |
本年度実施した【ポーラスアルミニウムのFSPを利用した作製法】では,昨年度に引き続き,各種アルミニウム合金を用いてポーラスアルミニウムを作製する際の適切なFSPおよび発泡条件の導出を行うとともに,圧縮試験に使用可能な大型・高品質なポーラスアルミニウムの作製に関する検討を行った.その結果,圧縮試験に使用可能な平均気孔径の10倍以上の大きさを有し,気孔率70~80%,平均気孔径1.5~3mm程度の高品質な試験体を作製することができた.また,ADC12を供試材とし,発泡剤を使用しない条件下で平均気孔径の小さく円形度の高い試験体の作製が可能となることが確認できた. 【薄膜センサの作製と発振回路法の高精度化】では,作製したひずみ測定用発振回路と汎用ひずみゲージを組み合わせて静的引張り試験によるひずみ計測試験を行った.センサ出力に内部抵抗の補正を行うことにより,汎用ひずみゲージを用いて通常のアンプを用いた計測と同程度の精度でひずみの計測が可能となった.薄膜センサに関しては,選定した二つの材料を用いてセンサを作製し,圧縮荷重下でのセンサの基本出力特性(荷重と静電容量変化の関係)を計測した.本薄膜センサをポーラスアルミニウムの圧縮試験に供することが可能となった. 【ポーラスアルミニウムの圧縮能評価試験】では,A1050とADC12の圧縮試験片を対象にX線CTで観察した後,静的圧縮荷重下の試験を,試験片の変形状態を逐次撮像しつつ実施した.また,本試験に対するイメージベース有限要素解析を行い,試験片内部の応力状態を解析した.その結果,ポーラスアルミニウムの圧縮荷重による局所的な圧潰状態の変化を視覚的に示すことができた.また,圧潰部に高い圧縮応力が発生した領域と対応していることが明確になった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で計画した以下の事項をほぼ達成できた.(1)70~80%の高気孔率・高品質で,圧縮試験に使用可能な大型のポーラスアルミニウムの作製が可能なFSPおよび発泡条件が設定できた.(2)測定精度を向上させた発振回路および薄膜センサを作製し,ボーラスアルミニウムの圧潰状況の検出に適用できるベースを構築できた.(3)X線CT撮像をともなう圧縮試験法を構築し,試験結果と撮像画像を用いたイメージベース有限要素解析結果をもとに,ポーラスアルミニウムの圧縮荷重による局所的な圧潰状態を明らかにすることができた.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果をもとに,50~85%程度までの広範囲の気孔率を有し,圧縮試験に使用可能な大型かつ高品質なポーラスアルミニウムの作製を行う.また,ポーラスアルミニウムの展開として複合材(サンドイッチ構造)化を試み,その作製条件に関する検討を行う.作製したポーラスアルミニウムを用いて,これまでに構築した方法にしたがってX線CTによる撮像をともなう圧縮試験を実施する.その結果と画像データをもとにしたイメージベース有限要素解析結果をもとに,局所変形層や圧潰部を事前に予測する方法の導出を試みる.さらに,開発・作製した薄膜センサを挟んだポーラスアルミニウムの圧縮試験を実施し,センサ出力による局所圧潰部の検出可能性について検討を試みる.
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