種々の結晶構造のマンガン酸化物の交流インピーダンス測定の結果、および中性子散乱結果を解析し、R-MnO2アノード触媒による燃料電池性能向上の機構を探った。 Cole-Coleプロットの円弧部の直径から、電荷移動抵抗がλ-MnO2、R-MnO2、β-MnO2の順で小さくなることが分かった。一方で、パラメータフィッティングをしたところ、R-MnO2ではプロトンの移動速度が速いことが明らかとなった。これがR-MnO2アノード性能が、他のMnO2よりも高い要因であると考えた。 また、λ-MnO2、R-MnO2、β-MnO2の導電率の温度依存性を解析した。この温度依存性から得られる活性化エネルギーは大きく異なり、β-MnO2で、62J/mol、R-MnO2で1300J/mol、λ-MnO2で2000J/molであった。これらの結果からβ-MnO2は電子伝導性が大きく、R-MnO2は電子とプロトンの混合導電性を有すると考えた。 一方で、R-MnO2の中性子非弾性散乱測定の結果、125meVに強い水素酸素間の結合に起因するピークが、また、360meVには弱い共有結合に関係するピークが見られた。これらより、R-MnO2は、その結晶中の酸素オクタヒドラの酸素酸素間に水素が存在するという形となることが分かった。R-MnO2の酸素酸素間距離は2.573オングストロームであるが、このような距離はλ-MnO2やβ-MnO2には見られない。中性子散乱結果と上記インピーダンス測定結果を併せて考えた結果、このR-MnO2特有の構造が、R-MnO2の水素導電性を向上させており、そのために、これをアノード触媒として使用した場合の燃料電池性能が上がっていることが分かった。 平成24年度は最終年度なので、ドイツおよび台湾での国際学会で、上記の成果を発表するため旅費として科学研究費の一部を使用した。
|