研究課題
脆性破壊のもととなる水素の挙動を定量的に観察し、存在位置と含有量を明らかにする事を目的とし、鋼内表面近傍での応力発生および電子励起脱離法(ESD)の二次元像を用いて、解析した。100μmから300μmのステンレスSUS304鋼の薄板を用い、背面から水素を供給して、透過してくる水素をESDを測定した。機械加工したステンレス鋼はオーステナイト相にマルテンサイト構造の含まれた構造である(光顕微鏡写真および、X線散乱より確認)。加工痕の残る試料を用い、ESDの二次元マッピングを行った結果、加工転位の多く残る部位からの水素放出は、転移の少ない部位に比べて大きいことを確認した。表面の形状(40μm旋盤加工の周期)と、同形状の水素イオン脱離の周期性が観察され、部位による水素イオン脱離の温度依存性も異なることも判明した。極高真空の残留ガスの主成分でもある水素が、ステンレス鋼など真空容器を作る素材表面からどのように脱離するかは、真空環境の研究においても大きな意味があるが、加工による表面の乱れなど、微視的な測定が行われたのは、この研究が初めてである。一方、水素含有による表面応力の発生が、水素照射下のステンレス鋼薄膜の歪み測定から確認された。マイクロカンチレバーの表面に成膜されたSUS304鋼を水素プラズマに暴露し、圧縮性表面応力を検出した。暴露を止め薄膜と平衡状態にある気相から水素を排気することで、水素が脱離し、圧縮応力は減じられたが、興味深いヒステリシスが生じることが確認された。また、繰り返し照射によって歪の絶対値が変化していくことも確認された。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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