研究課題/領域番号 |
22560710
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
山本 春也 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究主幹 (70354941)
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研究分担者 |
杉本 雅樹 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (90354943)
吉川 正人 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究主席 (40354948)
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キーワード | 放射線 / 水素 / センサー材料 / 金属酸化物 |
研究概要 |
放射性廃棄物などの貯蔵では、残留水分及び有機物の放射線分解によって発生する水素などの可燃性ガスモニタリング技術の開発が不可欠である。本研究では、放射線環境下で動作する光学式水素センサーの開発を目的に研究を実施している。具体的には、水素の吸蔵より可視光域の吸光度が変化する三酸化タングステン(WO_3)などの水素ガスクロミック層と水素分子を解離させるための白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の金属触媒層と組み合わせた水素検知材料を作製し、さらに、ガンマ線、電子線など放射線照射による水素ガスクロミック特性への影響を系統的に調べ、光学式水素センサーを構成する最適な材料系の選定を進めている。平成23年度は、三酸化タングステン(WO_3)以外に水素ガスより光学特性が変化する金属酸化物に関して調査した。具体的には、白金(Pt)触媒を担持した酸化モリブデンなど10種類の金属酸化物の薄膜試料を反応性パルスレーザー蒸着法などにより作製し、水素ガス(濃度1%)に対する可視光領域の透過光スペクトルの変化を調べた。その結果、三酸化モリブデン(MoO_3)、酸化バナジウム(O/V=0.23程度)では着色、三酸化ニッケル(Ni_2O_3)。では脱色を示す透過光スペクトルの変化が観測され、水素検知材料として利用できることがわかった。次に、Ptを担持したWO_3、を含む4種類の金属酸化物薄膜に対して、空気中でガンマ線照射(^<60>Co線源、1.17,1.33MeV、照射量:3.6MGy)を行い、それらの水素による光学的変化への影響に関して調べた結果、いずれの試料においても、ガンマ線照射後に水素ガスによる光学的変化の応答が遅くなる傾向を示した。さらに、Ptを担持したWO_3膜に対して空気中で約20keVの電子線照射を行った結果、約6MGyまでの照射では、水素ガスクロミック特性は影響されないことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水素ガスにより着色する三酸化タングステンなど4種類の金属酸化物を用いた水素検知素子試料の作製することができた。さらに、これらの試料に対してガンマ線、電子線照射による水素ガスクロミック特性への影響を調べた結果、白金・三酸化タングステンから成る水素検知素子が放射線環境下の水素検知に有望であることがわかり、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、スパッタリング法により作製した水素検知材料に対して^<60>Co線源からのガンマ線(1.17,1.33MeV)及び電子線加速器からの電子線(~2MeV)を照射し、水素ガスクロミック特性への影響を調べ、水素検知材料を構成する最適な触媒、金属酸化物を選定するとともに、前年度に作製した水素検知素子その場測定装置を用いて、ガンマ線照射下における水素検知素子の動作試験を実施する。最後に研究成果のまとめを行う。
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