研究概要 |
研究最終年度は、Ni, W, Zrの極薄金属表界面層を新たに追加して、高安定性銀薄膜の実現に関する実験を行った。また、表面層、界面層の役割を考察し、それらに適した金属について、総括した。 当該年度の実験結果として、Niの表界面層は、ある程度の効果が認められたものの、前年度検討したNb等に比べて劣っている事が判明した。一方、W, Zr表面層を用いた場合は、高安定性銀薄膜が得られることが判明した。 最終的な結論として、表面層物質には、まず、凝集エネルギーが大きく、加熱してもそれ自身が高安定であることが重要である事が判明した。W,Nb等がこれに該当する。一方、同エネルギーが中程度の場合は、酸化物を形成しやすいことが重要であり、Tiがこれに該当することが判明した。Ni等のように、どちらも大きくない場合は、高安定化を図るための表面層としての役割は十分ではなかった。また、銀と大きく固溶するPdも、加熱により、表面層が消失することから、不適切であることを確認した。一方、界面層としては、固溶しない事に加えて、酸化物基板と銀薄膜の密着性を向上させる上で、酸化物形成能が高い物質が適していることが確認できた。更に、TiやNb等を用いた場合に、銀薄膜が最密面を高配向させて、表面エネルギーを低下させる効果があり、優れた安定性が得られた。この結果から、銀と界面層物質の間の、原子サイズのマッチングも重要であることが判明した。 以上の結果から、高安定性銀薄膜作製時の適切な表界面層の選択に関する重要な知見が得られた。
|