研究概要 |
本研究はカーボンナノチューブ(CNT)複合めっきにおけるCNTの共析挙動を明らかにし,CNTの共析量制御を可能にすることを目的としている。平成23年度はCu/CNT複合めっきをモデルケースとして扱い,CNT複合めっき浴中におけるCNTのゼータ電位の評価およびCNT共析量に与える各種要因の検討を行った。 ゼータ電位は二種類の方法で評価した。振動電流法では実際の複合めっき浴に近い状態で評価が可能であったが,CNTのようなアスペクト比の大きな繊維形状物質では測定データの信頼性(ゼータ電位の電荷の符号)に課題が残った。電気泳動法では複合めっき浴を希釈した状態での測定となったが有効なデータが得られた。電気泳動法による測定からCNTの分散剤(ポリアクリル酸:PA)濃度が変化してもゼータ電位に大きな変化は無く,小さなマイナスの値となることが判明した。めっき浴中のCNTの分散性をレーザー回折式粒度分布計で測定した結果とCNTのゼータ電位測定結果には相関性が確認されず,CNTの分散性はゼータ電位,即ち電気的斥力ではなく分散剤(PA)の立体的保護作用に依存すると考察された。 めっき膜中のCNT共析量は分散剤濃度の増大に伴い増大する傾向を示した。CNT共析量はCNTの分散性と相関が見られ,分散性の向上に伴い共析量は増大する傾向が確認された。またCNT含有量は析出しためっき膜の表面形態(凹凸)と相関が見られた。以上のことからPAを分散剤とするCu/CNT複合めっきにおいてCNTの共析量はめっき浴中のCNTの分散性や析出するCu/CNT複合めっき膜の表面凹凸等に影響されると考察された。まためっき膜の表面凹凸はPA濃度,電流密度および電析中のCNT共析量に影響されることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複合めっき浴中のCNTのゼータ電位を二種類の方法で評価し,それぞれの特徴を明らかにできた。ただし期待していた振動電流法による評価に課題が残った。また,CNTのゼータ電位とCNTのめっき浴中における分散性に相関が無いこと,CNTの分散状態や複合めっき膜の表面形態(凹凸)と複合めっき膜中のCNT共析量に相関があることを確認できた。成果発表として学会発表は複数回行った。論文発表を急ぎたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後,複合めっき浴中のCNT濃度とめっき膜中へのCNT共析量の関係を明らかにし,Guglielmiの2段階吸着による共析メカニズムによる検証を行う。またCNTの形状が共析量へ与える影響について明らかにするために,構造が類似しており形状がCNTと大きく異なるカーボンブラックを用いてCu/CNT複合めっきを行い,CNTの形状の影響について考察する。これらの知見およびこれまでの成果をまとめて論文投稿を行う。
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