研究概要 |
平成23年度は,下記について研究を行った. 1.工具材料の疲労とAEフラクタル事象の関連の調査 2.実鍛造状態におけるAEフラクタル事象の取得とその整理と特徴の抽出 1.については,単軸負荷疲労試験を,種々の応力比で実行し,その寿命とAEフラクタルの変化を追跡した.材種により傾向は異なるが,繰り返し回数の増加に従い,比較的低い値のフラクタル次元の数が増加し,疲労損傷から破壊に至る様子が明らかになった.また,比較的高硬度な材料では,疲労の進展と共に急なフラクタル次元の低下が見られ,一方,比較的高靱性な材料では,疲労の進展と共に緩やかなフラクタル次元の低下が見られた.このことから,フラクタル次元を追跡することにより,疲労破壊の発生の検出が可能であることが明らかになった. 2.については,以前に行った実機による実験とほぼ同条件の試験を行い,フラクタル次元の変化を追跡した.その主目的は,再現性の検討である.実験上不可避なばらつきはあるものの,全ての実験で同じ傾向を示すことが明らかになった.すなわち,工具に何らかの過大な負荷が作用すると,低い値のフラクタル次元の発生頻度が高まった.この結果より,本研究成果は,高ノイズ環境である実鍛造工程において有益な工具損傷検出手法となり得ることがわかった. その他,研究室の設備を利用して,AEフラクタルによる板材成形の焼付き検出実験を行った.同時に検出した摩擦係数および温度変化に比べて,より早期に焼付きの検出が可能であることがわかった.破壊だけでなく,表面で生じる焼き付きにも適用可能であることの解明は,今後の本研究の適用として非常に有望であると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,開発システムの実証を工具材料の疲労試験など,研究室レベルでの実験に適用し,その妥当性を検討する予定である. また,鍛造用工具のみならず,その他の破壊現象検出への応用を図る.その一例として,被膜工具の被膜密着強度評価に多用されているスクラッチ試験に,本研究で開発したAEフラクタル次元を用いて,より精密な密着強度評価の可能性を調査する.
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