研究概要 |
本研究では、フェムト秒レーザー加工により固体表面に自己形成する微細な構造体の「サイズ」とその「結晶」を同時に制御し、新しい機能性付与金属表面加工の基盤を確立することを目的としている。特に、新しい結晶(非晶質)を付与したナノ構造体を作成し、従来法において非晶質が実現されなかった銅について、金属種とレーザー照射条件に関する基礎データからレーザー自己形成ナノ構造体のサイズとその結晶の関係を明らかにした。 機能性金属ナノ材料の設計製作では、固体物質の熱緩和時間(10^-12秒以上)よりも短いパルス幅をもつフェムト秒レーザー(10^-13秒以下)を使い、大気・室温下において銅薄膜について実施し、「非晶質」と「ナノ周期構造体」の両方を達成することに成功した。形成機構を解釈する高エネルギーイオン注入モデルを立案し、実験結果を説明することに成功した(Phys. Rev. B 83, 235413 (2011).)。更に、レーザーの照射条件を最適化することで「ナノ周期構造体」のサイズをレーザー波長の約1/10程度の大きさまでスケールダウンでき、かつ形状は「ナノ粒子状」になるという新しい知見を得た(Phys. Rev. B 86, 075431 (2012))。これらの成果は独立に実施されたもので、今後うまく組み合わせることができれば、種々の金属に対して非晶質を保ったままナノ構造体のサイズを自由に制御でき新機能創成のための要素技術になる。更に、非晶質に変化した金属ナノ構造体は、材料の「かたち」及び「密度」により決まる光物性に加え非晶質金属特有の性質を兼ね備えるため色範囲の拡大に貢献する可能性が高い。本基盤研究の成果はフェムト秒レーザー加工の基礎物理のみならず機能性材料作成において更なる高機能化を進めるうえで重要な知見である。
|