これまでは、Sn-Ag合金、および低温接合材料のSn-Bi共晶系はんだを用いたはんだ接合部におけるエレクトロマイグレーション(EM)現象について、はんだ材料そのもののEM現象の違いという観点から、現象を調査してきた。しかしながら、比較的高電流密度条件においては、電極のCuがはんだ内部だけでなく、はんだと電極の界面を通って拡散することから、はんだ中のCuの拡散速度、更には、はんだ・電極の界面構造の影響について調査をする必要が生じた。 そこで本年度は、Cu-Sn化合物など、特にはんだ接合部に形成する化合物相がEM現象に及ぼす影響について調査を行った。 その結果、Cu-Sn化合物はSnなどの金属元素と比較し、その中をCuが拡散することが遅いため、EMする速度(ドリフト速度)が遅くなることが確認された。また同じCu-Sn化合物であっても、Cu6Sn5相よりもCu3Sn相中の方が、更にCuのドリフト速度が小さくなることが確認された。このように接合部に化合物相が存在すると、EMの速度は減少するが、一方で化合物とはんだが混在する組織においては、Sn中をCuが早くEMすることには変わりはないため、必ずしも寿命が延長するわけではないことも確認された。 また、他の合金系の化合物としては、AgをUBM層として用いた時に形成するAg3Sn化合物相は、CuのEMを抑制するのに効果的な化合物であることが見出された。
|