研究概要 |
本研究では,多孔質電極を評価するための電気化学インピーダンス法を確立することを目的として,分布定数型等価回路の確立と,様々な分野への適用を目指す.3年間の研究期間において,その理論解析,コンピュータを用いるデータ処理,多孔質電極の評価とデータ抽出を行う.平成22年度は,分布定数型等価回路によるインピーダンス解析をフラクタル電極に発展させた.マクロ孔,メソ孔,ミクロ孔と繰り返し構造を有する電極のインピーダンススペクトルの理論を提案するのとともに、特有なインピーダンススペクトルを見出した.一般的な平板電極ではインピーダンススペクトルのナイキスト線図は容量性半円を示すが,多孔質電極では高周波数域に実数軸と45度の傾きをもつ直線の軌跡が現れる。さらに,マクロ孔からメソ孔へと分岐構造を持つ多孔質電極では,上記の直線の傾きが小さな値となることを理論的に証明した。以上のように,細孔構造に起因して,インピーダンススペクトルの高周波数域の形状が敏感に変化することを明らかにした.平成23年度は、分布定数型等価回路に対応するコンピュータ計算法の確立を目指した.基本的には,Microsoft ExcelやMatlabなどの計算ソフトを利用した高速演算法の検討を行った.本演算では,様々な分岐数を有するフラクタル電極のインピーダンスを迅速に予測することが可能である。さらに有限要素法を用いて,細孔内での電流線分布とインピーダンススペクトルの関係を検討した.その結果、二次元的な電流線分布によりインピーダンススペクトルの形状が大きく変化することを見出し、インピーダンス測定による細孔電極の構造解析の可能性を示した。
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