マグネシウム(Mg)合金は実用金属中最軽量であり比強度が高いため,電子機器の筐体や輸送機器部品への適用が拡大している.しかし,常温でのすべり系に乏しく,Mg合金圧延材は底面(0002)が圧延板面に対して平行に配列する結晶集合組織を形成することから,常温での成形が困難である.また,化学的活性度が高いために腐食しやすい欠点も有する.このため,近年省エネルギー化や低燃費化が求められる航空機産業や自動車産業などの構造部材への適用例は少ないのが現状である.このMgの常温成形性と耐食性を改善するため,Mgの表面をアルミニウム(Al)で被服したMg/Alクラッド材の研究が広く行われている.著者らは予備実験として熱間プレス(圧着温度400℃)を用いてMgとAlを接合し,クラッド板密度2.0 g/cm3を狙ったMg/Alクラッド板を試作した.MgはAZ61Mg合金,Alは伸びの良いA1100を用いた. MgとAlの境界面に形成されるMg-Al系金属間化合物Mg17Al12により,曲げ時あるいは圧延時にMgとAlの剥離が発生した.そこで,この金属間化合物を抑制するため,MgとAlの間にチタン(Ti)フォイル状の薄板を挿入したMg/Alクラッド板を試作し,Mg-Al系金属間化合物の形成抑制に成功した.また,室温における引張り試験ではAZ61(母材)の約2倍の破断伸びを示し,Ti薄板を挿入したMg/Alクラッド板はTi薄板のないMg/Alクラッド板よりも高い機械的性質を得た.
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