研究概要 |
試作した人工降雨機を用いて種々の組成の電解質水溶液(模擬雨水:NaCl, Na2SO4, NaNO3/0.02~0.2mS/cm)を所定の降水速度(0.5~10.5mm/h)で降らせ、この中にACM(Atmospheric Corrosion Monitor)センサと炭素鋼試験片を設置し、種々の時間暴露した。ここで、ACMセンサは従来型のもの(Fe/Ag-対)を用いた。また,模擬雨水の導電率を主として0.02mS/cmとしたが、これはつくば市で採取された降雨での値である。センサ出力は、模擬雨水の液性(組成や導電率)に依存するが、降雨速度には依存しなかった。ACMセンサ出力は模擬雨水の導電率が高いほど大きくなった。また,同じ導電率を有する模擬雨水で比較すると、Na2SO4 の場合に特に大きくなった。 炭素鋼の腐食量とACMセンサ出力を比較したところ、センサ出力が0.5C/5h以上の場合には腐食量はセンサ出力とともに大きくなったが、0.5C/5h以下では腐食量はセンサ出力に依存しなかった。また、腐食量を腐食速度(CR[mm/y])に換算し、模擬雨水の導電率で整理したところ、導電率が0.02mS/cm以上の場合にはCRは導電率とともに大きくなったが、0.02mS/cm以下ではCRは導電率に依存しなかった。すなわち、導電率が0.02mS/cm以下の降雨では、炭素鋼の腐食速度は一定であり、その腐食量は降雨時間で決まることがわかった。 ACMセンサのFe電極およびAg電極の分極曲線を模擬雨水中で測定したところ、Na2SO4でのACMセンサ出力および腐食量が大きかったのは、この環境下でのFe電極の電位がかなり低いためであることがわかった。すなわち、ACMセンサのFe/Ag-電極間の電位差を測定することによっても、降雨の組成を測定できる見通しが得られた。
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