研究概要 |
国内外問わず蒸気発生器(SG)伝熱管内壁の水側からの腐食による事故が発生しており、検査技術は極めて重要である。現在は渦電流探傷試験(ECT)により検査が行われているが、高速な検査が可能という長所がある一方で、材料の磁気特性や微小な形状の変化に影響を受けやすいという短所もある。この短所を補完する技術として複雑な形状および深さが数μm程度の微小欠陥が検出可能な磁粉探傷試験(MT)もSG伝熱管検査に適応する事により高度化を目指す。 MTをSG伝熱管に適応させるためには伝熱管内部から磁化させる必要があり、実用化するためにはSG伝熱管用磁粉探傷磁化器の設計が重要となる。本年度は欠陥深さ形状をパラメータにした複数の試験体を機械加工により作製し、欠陥部から発生する漏洩磁束密度を計測した。長さ100mmのSTBA24(2.25Cr-1Mo)配管を軸方向に4等分し、4等分した配管中心部にそれぞれ周方向の欠陥(長さ10mm・深さ0.1mm,0.2mm,0.4mm,0.8mm)をつけたものを試験体として用いた。実験方法は磁化器(1099AT)を作製した試験体に押し当て、磁化中に3次元ガウスメータと3次元用プローブ(GM5307,電子磁気工業株式会社)を用い、欠陥部から漏洩する垂直成分と平行成分の磁束密度を計測した。その結果、欠陥の深さに関わらず水平成分は30mT、垂直成分は10mTであった。この原因として磁化器と欠陥部の距離が35mmであったこと、試験体が湾曲していたため磁化器を試験体に完全密着出来なかった事が挙げられる。磁束線は磁化器に接している面から通り抜けるが、磁化器を試験体に密着していない部分からの磁束線が多すぎたため、欠陥部からの漏れ磁束ではなく、試験体に密着していない部分からの磁束線を計測したと考えられる。そのため磁化器の接地面を配管の形状に合わせて加工する必要がある。
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