研究概要 |
重度な汚染土壌を想定し,Pb,Cu,Zn,Cdにより高濃度に汚染された重金属複合汚染土壌の浄化に対して本法の適用性を検討した。鉛汚染土壌に対象重金属を湿式吸着させた模擬重金属複合汚染土壌を調製し,それを試料として用いた。各重金属の含有量は,Pb 2500 mass ppm, Cu 1700 mass ppm, Cd 1200 mass ppm, Zn 1000 mass ppmとした。塩化剤発生部の混合塩組成および珪藻土配合率,処理温度,処理時間,汚染土壌に対する塩化剤発生部の量,キャリアガス流量が重金属の除去挙動に及ぼす影響について検討し,以下の知見が得られた。塩化剤発生部の最適な混合塩組成はMgCl_2:CaCl_2=3:1であり,珪藻土配合率は60%の条件であった。塩化処理時間,塩化剤発生部量による重金属除去挙動への影響はほとんどなかった。キャリアガス流量を増やすことで,生成した重金属塩化物の揮発が促進され,除去率が向上した。処理温度を高くすることで,Cu以外の除去率が大きく向上した。 次に,塩化処理雰囲気を熱力学的に考察したところ,キャリアガスとしてアルゴンガスを用いた場合,水蒸気と土壌中の炭素間の反応により処理中の雰囲気が還元雰囲気となり,Cuの塩化が阻害されることがわかった。そこで,酸素分圧を上げるために,キャリアガスとして空気を用いて塩化処理を行うことで,他の重金属の除去率を維持したままCuの除去率を向上させることができた。上記の知見を基に得られた最適条件(MgCl_2:CaCl_2=3:1,珪藻土配合率60%,1073K,30分,空気流量1.5mL/s)において塩化処理を行った結果,土壌汚染対策法により含有量基準値が定められているPb,Cdについて,その基準値を満足させることができた。
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