研究課題
ブラウン管のファンネルガラスを粉砕したファンネルダストを試料として、溶融還元法による鉛の分離・回収について検討を加えた。実験には高温雰囲気炉を用い、ファンネルダストに還元剤と成分調整のための試薬を添加し、溶融還元することで鉛を金属鉛として回収した。還元剤としては、鉄粉や活性炭の他、小麦粉やPEGなどの有機物を検討した。溶融還元において成分調整のための試薬を添加しないと、生成した金属鉛とガラスの分離性が悪く、溶融助剤としては炭酸ナトリウムが効果的であることが分かった。還元剤として、鉄粉はほとんど効果がなく、活性炭を用いると、品位約80%の金属鉛が得られ、その時の鉛の回収率は約65%であった。還元剤として小麦粉を用い、溶融助剤として炭酸ナトリウムを添加してファンネルダストを溶融還元すると、品位約94%の金属鉛が得られ、その時の鉛の回収率は、約81%であった。さらに、PEGやPETなどの有機物は、小麦粉と同等、あるいはそれ以上に有効な還元剤として働くことが分かった。小麦粉やPEGやPETなどの有機物が活性炭よりも還元剤として効果的であった理由は、有機物に含まれる炭素の他に水素も還元に寄与するためであると考えられる。溶融還元の残さである鉛回収後の発泡ガラスからの鉛の溶出濃度は、未処理のファンネルダストからの鉛の溶出濃度よりも高くなった。これは溶融助剤の添加による影響であると考えられ、溶融還元残さの無害化には、別途処理が必要であることが判明した。
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Proceedings of 1st International Workshop on Environment, Energy and Innovative Technology in Minamata
巻: 1 ページ: 59