ブラウン管ファンネルガラスからの鉛の回収と無害化を目的として、還元溶融による金属鉛の回収と塩化揮発による鉛の除去について検討した。また、鉛回収残渣からの鉛の溶出性についても検討を加え、以下の結果を得た。 還元剤として小麦粉を添加して還元溶融を行うことで、純度94%の金属鉛の回収に成功し、このときの鉛の回収率は81%であった。ファンネルガラスに溶融助剤として炭酸ナトリウムを添加することで、鉛の凝集・沈殿が促進された。還元剤として米ぬかを使用した場合も高い回収率(97%)で金属鉛を回収できた。還元剤として米ぬかを用いた場合、最適溶融条件は、溶融温度1200℃、溶融時間5時間、もしくは溶融温度1300℃、溶融時間4時間であった。 還元溶融において残渣として生じる発泡ガラスの鉛含有量はファンネルガラスの6分の1になっているにもかかわらず、環境庁告示第46号溶出試験による鉛の溶出量はファンネルガラスよりも多かった。これは、溶融助剤として用いた炭酸ナトリウムによりシリカのネットワークが切断されたためであると考えられる。なお、ファンネルガラス、発泡ガラスともに、シリカの含有量を70%以上にすると、鉛の溶出量を環境基準値以下にすることができた。 塩化揮発に及ぼす処理温度の影響について調査した結果、温度上昇とともに揮発率は向上した。塩化揮発の処理時間の影響について調査した結果、保持時間を長くすることで、800℃程度の低温でも揮発率を向上させることができた。800℃にて3時間保持した場合の鉛の揮発率は、塩化ナトリウムと塩化カリウムで、それぞれ、27%、45%であり、1000℃では、それぞれ、76%、97%であった。空気に水蒸気を導入することにより、塩化揮発が促進されることが分かった。このとき、塩化ナトリウムと炭酸ナトリウムを添加したものの鉛の揮発率は88%であった。
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