研究概要 |
申請以前の研究では,冷間圧延後の最終焼鈍における再結晶過程に着目し、ECAP(チャンネル角120°)と冷間圧延の複合工程によりフェライト系ステンレス鋼板の集合組織の変化とr値向上機構の解明を目的に研究した。その結果、ECAP加工により多くの結晶粒内部に変形帯が導入され、これら変形帯の部分が局所的に{001}//NDマトリックス中に存在し,最終焼鈍時の再結晶の核生成サイトとなることが明らかになった.これらの効果によりECAP加工を加えることによる再結晶温度が低下することが確認された.そこで一昨年前の本補助金採択時からはひずみ量の高いチャンネル角90°のECAP金型を設計開発し、1パスでのひずみ量増加の影響を明らかにした。新金型の完成が予定より半年程度おくれたものの、当初の計画を達成することができた。板厚保4mmの熱延焼鈍板に対してφ=90°のダイスを用いて室温でECAP加工を1~3Pass行った後に冷間圧延した.なお、ダイスの破壊を防ぐために温度150°で行った。冷間圧延ECAP前後と冷延後の結晶方位分布を調べるため,ECAP法による結晶方位分布測定を行った.冷延板の再結晶温度を調べるため,冷延板に焼鈍し温度を変化させ,各温度でのビッカース硬さと組織観察を行った.昨年の120°の結果と同様にECAP加工により多くの結晶粒内部に変形帯が導入された事がEBSDから確認された.また、ECAP後の冷延により,これら変形帯の部分が局所的に{001}//NDマトリックス中に存在し,最終焼鈍時の再結晶の核生成サイトとなると考えられる.右図にECAP加工を加えることによる再結晶温度が低下することが確認された.焼き鈍し後EBSDによる板厚中心付近の結晶方位分布測定した結果,ECAP加工により{001}減少し,{111}増加することが確認された。しかし、従来工程に比較して再結晶温度の低下とリジング改善効果は確認されなかった。ECAP加工を150°で行ったため、転位密度が予想以上に増加しなかったためと考えられる。
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