研究概要 |
熱エネルギーを高密度で長期間貯蔵できる潜熱蓄熱により、工業廃熱の有効利用を計るため、本研究では熱媒と蓄熱物質が直接接触する形式の蓄熱槽を対象として、安定かつ高効率な操業条件を得るための指針を見出すことを目標に、小型の蓄熱槽を作製し、その内部における熱媒流動特性をミクロ視点から検討した。 作製した蓄熱槽は内部の現象を歪みなく観察するため、円筒形ガラス蓄熱槽を直方体のガラス水槽内に設置した二重構造となっており、二重の槽間を熱媒で満たした。内筒には疑似蓄熱物質として水を槽下部に充填し、円筒形蓄熱槽の底面中央のノズルからギヤポンプを用いて、蓄熱槽の上部が熱媒により満たされるまで熱媒を注入した。槽内は水と熱媒の比重差により下部の水と上部の熱媒の二層に分かれた状態となる。この状態からさらに熱媒をノズルから所定流量で注入し、ノズル部分での熱媒液滴生成挙動,疑似蓄熱物質槽内の熱媒上昇挙動および熱媒と疑似蓄熱物質の分離挙動を観察した。 本年度は、ノズル径1から6mm、熱媒流量0.97×10^<-6>から5.53×10^<-6>m^3s^<-1>の範囲で測定を行った。この範囲において、いずれの条件でもノズル近傍で熱媒の液滴が形成し、これが水層内を上昇した。液泡の形成の形態は、ノズル出口における熱媒流速が大きくなるに従って、即ち熱媒流量が大きく、またノズル径が小さくなるに従って、ノズル出口における単一液泡形成,ノズルに形成した液柱先端からの単一液泡形成,液柱先端の分裂による複数液泡の同時形成さらにノズル出口での微粒化へと変化した。これらの液滴は下部の水層を不規則な経路で上昇した。上部の油層の境界面付近に到達した液泡は、液泡の形態のまま一旦界面付近に停滞して液滴層を形成した後、合体・破裂を繰り返して最終的に上部の熱媒層に放出されることが観察された。
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