研究課題/領域番号 |
22560742
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
埜上 洋 室蘭工業大学, 大学院・工学研究科, 教授 (50241584)
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キーワード | 潜熱蓄熱 / 直接接触 / 液滴生成 / 液滴分離 / 流動特性 / 凝固溶解 |
研究概要 |
熱エネルギーを高密度で長期間貯蔵できる潜熱蓄熱により、工業廃熱の有効利用を計るため、本研究では熱媒と蓄熱物質が直接接触する形式の蓄熱槽を対象として、安定かつ高効率な操業条件を得るための指針を見出すことを目標に、小型の蓄熱槽を作製し、その内部における熱媒流動特性をミクロ視点から検討した。 作製した蓄熱槽は内部の現象を歪みなく観察するため、円筒形透明蓄熱槽を直方体の透明水槽内に設置した二重構造となっており、二重の槽間を熱媒で満たした。内筒には疑似蓄熱物質として水を槽下部に充填し、円筒形蓄熱槽の底面中央のノズルからギヤポンプを用いて、蓄熱槽の上部が熱媒により満たされるまで熱媒を注入した。槽内は水と熱媒の比重差により下部の水と上部の熱媒の二層に分かれた状態となる。この状態からさらに熱媒をノズルから所定流量で注入し、ノズル部分での熱媒液滴生成挙動,疑似蓄熱物質槽内の熱媒上昇挙動および熱媒と疑似蓄熱物質の分離挙動を観察した。 23年度は、蓄熱槽内の液滴の挙動の検討に高速度ビデオ撮影を取り入れて測定を行ったところ、前年度に分類された液滴形成機構の境界領域での液滴形成機構、即ち液柱からの液滴形成時に複数の液柱のくびれがほぼ同時に切断による縦列に連続した滴列の形成、および液柱先端の分裂による平方向に分散した滴列の形成の領域が存在することが明らかになった。 また、酢酸ナトリウム三水和物を蓄熱剤として使用した蓄熱実験において、放熱時の蓄熱槽内の液滴流動は、基本的に冷間の流動測定により得られた流動特性をと同様となること、放熱の進行に伴う熱媒滴表面付近への蓄熱剤の微細結晶の形成と脱離・再溶解・蓄積挙動の変化を明らかにした。さらに蓄熱時の凝固蓄熱剤層内の熱媒流通経路の形成および溶解に伴うその拡大と、その後の溶解蓄熱剤プールの形成についても明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、直接接触式潜熱蓄熱槽の性能を槽内を流通する単―滴・滴列の挙動に基づいて評価・推定する手法を確立することにある。当初予定では初年度は装置作成および単一滴の挙動測定、第二年度に当たる23年度は単一滴挙動の精査および滴列への展開を行うことになっており、上述のようにおおむね予定通り進行していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度に当たる次年度(24年度)はこれまでに実施してきた試験内容を継続して行うと共に、当初目的を達成するため、これまで蓄積してきた種々の情報の整理および定量評価を行う予定である。
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