熱エネルギーを高密度で長期間貯蔵できる潜熱蓄熱により、工業廃熱の有効利用を計るため、本研究では熱媒と蓄熱物質が直接接触する形式の蓄熱槽を対象として、安定かつ高効率な操業条件を得るための指針を見出すことを目標に、小型の蓄熱槽を作製し、その内部における熱媒流動特性をミクロ視点から検討した。 本研究で使用した小型蓄熱槽は円筒形透明蓄熱槽を直方体の透明水槽内に設置した二重構造となっており、二重の槽間を熱媒で満たすことで内部の現象を歪みなく観察可能である。内筒には蓄熱物質 (酢酸ナトリウム三水和物) または流動測定時の疑似蓄熱物質 (水) を槽下部に充填し、円筒形蓄熱槽の底面中央のノズルからギヤポンプを用いて、蓄熱槽の上部が熱媒により満たされるまで熱媒を注入した。槽内は水と熱媒の比重差により下部の水と上部の熱媒の二層に分かれた状態となる。この状態からさらに熱媒をノズルから所定温度・流量で注入し、蓄熱槽の蓄熱特性,層内の伝熱特性および流動特性を測定した。 24年度は、液滴形成挙動について高速度ビデオを用いた測定を継続し、生成液滴系分布,液柱長さの変化ならびに液滴形成挙動の変化する条件について定量化し、熱媒液滴の生成挙動については、ノズル系および流量により整理できることを示した。また、蓄熱・放熱試験を行い、熱媒の流入・流出による熱流入と流出および蓄熱槽からの熱損失を考慮して蓄熱槽としての蓄・放熱速度を決定し、その経時変化を明らかにすると共に、熱媒供給条件の影響を定量化した。同時に、蓄熱槽内を上昇する熱媒液滴の形状,上昇速度および温度のその場測定を行い、上昇液滴のアスペクト比,上昇速度への熱媒供給条件の影響を明らかにした。これらにより蓄熱槽の性能を検討するための基本的な知見が得られた。
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