マグネシウムは蒸気圧は高く、リサイクルするには、各元素間の蒸気圧差を利用した<気相リサイクル>の真空蒸留法が有効であるが、実用化例はない。そこで、本研究では、マグネシウム合金廃棄物の気相リサイクルプロセスについて研究開発を行った。本研究では、主として以下の2つについて明らかにした。 1)真空蒸留法によるマグネシウム合金の気相リサイクル 市販のMg-Al-Mn、Mg-Al-Zn系等合金を原料に、真空蒸留法による適切なリサイクル条件を明らかにした。原料300gにおいて、原料温度600℃、回収温度340℃で、直径50mmの凝縮物(1回で4個)を回収すると、凝縮物3個用いると、長さ60mm前後になり、押出用ビレットのサイズになる。Mg-Al-Mn系の原料であれば、純度99.999%弱の高純度マグネシウムが得られ、Mg-Al-Zn系の原料であれば、Zn以外は含まれない高純度Mg-Znになった。 2)マグネシウム気相リサイクル材の特性 得られた押出比16のリサイクル押出材の引張特性は、引張試験を行い、引張強さ、0.2%耐力、伸びを測定した。また、引張試験後の破断面をデジタルマイクロスコープ、走査型電子顕微鏡で観察した。塩化ナトリウム水溶液中での耐食性を浸せき試験により評価した。高純度マグネシウムで得られたリサイクル押出材は、引張強さ125MPa程度、0.2%耐力75MPa程度、伸び15%弱であったが、Mg-0.3%Znで得られたリサイクル押出材は、引張強さ175MPa程度、0.2%耐力125MPa前後、伸び20%弱となった。Mg-0.3%Znの方が延性的な破面が多く認められた。耐食性は孔食は認められず、良好だった。
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