同一の有機医薬品結晶を製造しても、生理学的効果に差が生ずるのは、結晶多形の制御が充分でないことに起因する。また、最近の医薬品は高機能化(分子量が増加)しており、微粒子化しない限り溶解しづらくなってきている。すなわち、医薬品製造では、いかに結晶多形を制御し、微粒子の状態で製造するかがキーテクノロジーとなる。本申請課題では、簡単な操作で、鋳型上に有機結晶の核を同時発生させ、さらに結晶成長を制限することで、微粒子でしかも構造制御された高品質な有機微結晶粒子群を創製する手法を提案する目的で実施した。 最終的なターゲットは有機医薬品結晶とするが、まず初年度は、予備実験で確認してあるグリシン(結晶化物質)-ロイシン(構造メッセンジャー)-水(溶媒)を用いて核化トリガー機構の解明と、泡沫(気泡の集合体)の滞留時間制御についての検討を行った。透明なチューブ型晶析装置を用い、気泡を押し出し流れで整流しながら、チューブ出口での結晶粒子を観察した。装置が定常になれば、チューブの長さ方向の位置と、結晶の成長時間とは対応可能であるので、その状態を観察した。初年度の研究成果は国内で毎年開催されている分離技術会年会の晶析分野で発表した。有機微結晶を、鋳型を核トリガーとして利用しながら粒径と構造とを同時制御する手法には新規性がある。この研究は、結晶多形に関する基礎研究、あるいは過飽和度の制御の研究など、研究室に蓄積されたいくつかの成果を用いて実施している。
|