本研究では、スケールアップが可能なプラスミドDNAの精製および濃縮法として膜濾過法に着目し、プラスミドDNAと親和性のあるリガンドを探索するとともに、リガンドと分離膜とを用いるアフィニティ膜濾過法を確立し、プラスミドDNAの精製プロセスを開発することを目的とする。本年度は、リガンドおよび分離膜を選定し、アフィニティ膜濾過条件の探索を行った。様々な物質を用いてプラスミドDNAの吸・脱着試験を行い、pH8付近に等電点があり、pH7以下では正、pH9以上では負に帯電するα-Fe_2O_3をリガンドとして選定した。プラスミドDNAは、ポリアニオンであるため、試料液のpH変化による吸・脱着が可能となった。吸着挙動はLangmuir式で近似され、pHが小さい程、より多くのプラスミドDNAを吸着できることが明らかとなった。また、吸着後にpHを10程度に変化させることで、リガンドに吸着したプラスミドDNAの大部分が脱着されることがわかった。膜濾過実験の結果、プラスミドDNAは精密濾過膜を透過するが、リガンドのα-Fe_2O_3は精密濾過膜で阻止できたことから、プラスミドDNAをα-Fe_2O_3に吸着させて精密濾過することで膜面上に保持でき、その後α-Fe_2O_3から脱着させることでpDNAを精製できるものと考えた。そこで、プラスミドDNAの劣化が生じないpH5の条件で吸着濾過を行い、その後生成したα-Fe_2O_3ケークにα-Fe_2O_3の等電点よりも大きなpH9および10のbufferを透過させた。プラスミドDNA量の指標となるOD_<260>は、pH1Oのbunfferの透過初期に顕著な値となり、プラスミドDNAが脱着されることが確認され、アフィニティ膜濾過が精製法として有用なことを示すことができた。
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