研究概要 |
本研究の目的は、リン酸イオンに対し高選択性と大吸着容量を有するハイドロタルサイト化合物(HT)を大量に担持し、かつ効率的に再生とリン回収を可能にする樹脂成形体を開発し、中・小規模の生活排水処理施設に適用可能なコンパクトで高性能な超高度リン除去・回収・再資源化システムを確立することである。 平成22年度は、HTのリン吸着機能を十分に発揮させ、低コストで製造可能な最適樹脂成形体の開発を行った。詳細は以下の通りである。 【樹脂成形体の試作】 従来、透水性・担持量・強度の観点からHTの担持体にアラミド樹脂を使用していたが、樹脂自体が高価であり、結果的にHT担持成形体の価格も高くなるため、実用化が難しかった。アラミド樹脂に代わる担持体を開発するため、安価な樹脂により種々成形体を試作した結果、エチルセルロースを用いて試作した樹脂成形体(以下,新型HTCFと称す)は、HTを重量比90%と大量に担持でき、かつアラミド樹脂成形体の1/2の製造コストで安定的に製造できることが分かった。 【新型HTCFの性能評価】 新型HTCFのリン吸着・再生・回収能力を基礎的に検討した結果、アラミド樹脂成形体と同等の最大リン吸着量(55.40mgP・g^<-1>HT)を有しており、吸着したリンの脱離および再生もアラミド樹脂成形体と同様な方法で実現が可能であった。また、脱離したリンは99%以上の回収率でHAPとして回収できた。一方、貫流容量はカラム試験の結果より、アラミド樹脂成形体に比べて約1/2まで低下した。これは新型HTCFのリン吸着速度がアラミド樹脂成形体に比べて遅いことが原因であるが、まず処理速度等の通水条件やカラム装置条件の最適化を行い、必要に応じて樹脂成形体への浸透拡散性の向上を図り、新型HTCFの貫流容量の向上を目指す。
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