研究課題/領域番号 |
22560747
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
佐藤 利夫 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (40170766)
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研究分担者 |
桑原 智之 島根大学, 生物資源科学部, 助教 (10397854)
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キーワード | 富栄養化 / 無機層状化合物 / ハイドロタルサイト / 高度処理 / リン除去 / リン回収 / イオン交換 / 吸着 |
研究概要 |
本研究の目的は、リン酸イオンに対し高選択性と大吸着容量を有するハイドロタルサイト化合物(HT)を大量に担持し、かつ効率的に再生とリン回奴を可能にする樹脂成形体を開発し、中・小規模の生活排水処理施設に適用可能なコンパクトで高性能な超高度リン除去・回収・再資源化システムを確立することである。 平成23年度は、HTの吸着能力再生に使用する再生液の最適組成を決定するため、再生率・再生回数と再生液の種類・濃度等との関連性を検討する予定であった。しかし、昨年度試作したHT担持エチルセルロース成形体の貫流容量が従来の成形体に比べ1/2程度低かった(平成22年度報告)ことから、最適再生液組成の検討に先立ち、製造コストを低く抑えたまま貫流容量を向上させるための検討を行った。 形状と粒径を変えてHT成形体を試作した。3.4mgP/Lリン酸水溶液(生活排水二次処理水のリン濃度に相当)を用いたバッチ法により(1)円盤状(H1mm×φ1~2mm及びφ3~5mm)、(2)球状(φ1~2mm及びφ3~5mm)、(3)円柱状(既存H2mm×φ0.5mm)のHT成形体のリン酸イオン吸着速度を比較検討した結果、HT成形体の形状は吸着速度に影響を与えず、特に粒径の小さなHT成形体ほど吸着速度が速くなることがわかった。この結果は、HT成形体の吸着速度が材内部への浸透拡散に制限されることを示しており、粒径を小さくすることによって貫流容量の向上が期待できる。 今年度で最適樹脂成形体の選定はほぼ完了することができたことから、今後は最適な再生液組成を決定するため、HTのリン吸着能力再生のメカニズム解明を含めた最適再生液組成及び最適再生条件の検討を行い、さらに、固定床吸着装置を対象にした実排水を用いたリン吸着・再生試験を行い、超高度リン除去・回収・再資源化システムの最終評価を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的には、HTを大量に担持し、かつ貫流容量を向上させた樹脂成形体を開発することが挙げられ、平成23年度までに安価な樹脂を使用して合成に成功している。一方、HTの再生に関してはメカニズムの解明には至っていないが、リンの回収形態をMAPに限定すれば、これまでの二液再生法の適用が望ましく、今後は再生液濃度を検討することによって実排水での実証試験へと移行することが可能である。したがって、区分(2)と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
樹脂成形体として粒径1~2mmのHT粒状体を作成し、これを固定床吸着装置に充填して実排水を原水としたリン吸着・再生のターンオーバー試験を実施する。 当初計画では実機レベルの吸着装置を使用する予定であったが、現状では造粒技術が大量生産に対応していないことから、装置に充填するだけのHT粒状体の量を十分に確保することが難しい。よって、実機では貫流容量向上を確認するための通水試験を繰り返し行うことが困難と判断し、実排水を対象にしつつもスケールダウンしたカラム試験により貫流容量を測定する。最終的なシステム評価を行うため、既設の実規模装置へスケールアップした際に生じると予想される問題点を抽出する(例えば、目詰まりやそれを回避するための逆洗の必要性など)。リン吸着・再生のターンオーバー回数増加に伴うHT粒状体の劣化状態の確認と、再生液の繰り返し使用によるリンの濃縮とそれを用いたMAP回収量を把握し、最終的に超高度リン除去・回収・再資源化システムとしての評価を実施する。
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